【小さな体から大音量!】セミはどうやって鳴くの?セミの鳴く仕組みについて解説!

生態解説
記事内に広告が含まれています。

夏になると必ず聞こえてくるあの喧しい声。体長数センチの体から出ているとは思えないほど大音量ですよね。セミはどうしてあの小さな体からこれほどの大きな音を出せるのでしょうか?セミの鳴く仕組みについて解説します!(この記事では海外に生息する一部特殊な発音を行うセミについては除外しています)

ミソミソ

セミ好き歴20年!
写真や映像を学び、セミの魅力を発信することを目標にしています。

ミソミソをフォローする

【前提として】セミの鳴き声について

そもそもセミって何のために鳴くの?

ご存知の方も多いと思いますがセミはオスしか鳴きません。オスのセミは、メスのセミに自分の存在を知らせて求愛し、子孫を残すことを目的に寿命の限り一生懸命鳴きます。一部別の目的で鳴くこともあるため、こうした配偶行動のための通常鳴き声は主鳴音(本鳴き)と呼ばれます。そのため、当然ながらメスのセミは一切鳴かないし、そもそも発音に必要な仕組みを持っていません。

鳴くオスのエゾゼミ(左上)と吸汁中のメスのエゾゼミ(右下)

主鳴音の種類

主鳴音はもちろんセミの種類によって全く異なります。ミンミンゼミのように「ミーンミンミンミンミンミー」と抑揚のあるリズムだったり、エゾゼミのように「ギィーーーーーーーー」と単調だったり、場合によってはツクツクボウシのように非常に複雑だったりします。

セミの鳴く仕組み

音が出る仕組み

オスのセミの発音器官は、胸部と腹部の境界にある腹弁と呼ばれる左右一対の部分の下の体内にあります。そこにはV字状の発音筋とその左右に発音膜があり、発音筋を高速で収縮させることにより発音筋からつながる発音膜を凹ませたり元に戻したりして空気を振動させます。つまり、筋肉によって膜を高速で動かして空気の振動を作り、音を出しているのです。この発音器官は羽化直後はまだ未成熟なため、羽化から数日はオスでも発音できません。ちなみに腹弁はセミの種類によって形が異なり、ヒグラシのように小さいタイプやクロイワツクツクのように大きく長いタイプなど様々です。また、腹弁はメスにも存在しますがオスほど発達せず小さいので目立ちませんし、もちろん発音筋などの発音器官は備わっていません。腹弁の直下には雌雄共通で鏡膜と呼ばれる聴覚器官(耳に相当する器官)が存在し、セミはここで音を感知していますが、オスの方が発達しています。

※標本を撮影
腹弁を開けて鳴くニイニイゼミ(中に見えるのが鏡膜)

大きな音になる仕組み

しかしながら、発音膜で音を出したからといってその音はとても小さくこのままではメスに届く音量になりません。ではどのようにして出した音を大きくするのでしょうか。それは前述の腹弁付近の腹部を見ればわかります。ほとんどのオスのセミの腹部は空洞になっているのです。この空洞の腹部は共鳴室とも呼ばれ、発音膜で発生させた音を増幅させています。

※標本を撮影

鳴き声を「演奏」する仕組み

最後にセミの鳴き声を「演奏」する仕組みについて。セミは前述のように、種類ごとに独特の強弱やリズム、音程を持っています。特にツクツクボウシは世界的に見て最も音楽的な鳴き方をします。こうした鳴き声の演奏は腹部の外壁の動きが関係しています。腹部を動かすことによって共鳴室内の容積が変化し、音が変わります。セミはお腹を規則的に動かし、種類ごとに固有な鳴き声を出しているのです。他にも鳴き声には腹弁の形などが関係しています。また種類によって腹部の腹壁の硬さが異なり、エゾゼミやクマゼミ、アブラゼミのように腹壁が硬質な種類は鳴き声が単調か同じリズムの繰り返しである一方、ツクツクボウシやエゾハルゼミのように腹壁が柔らかく紙風船状の種類は複雑な鳴き声である傾向にあります。このように、オスのセミは発音筋を使って発音膜を動かすことで音を出し、共鳴室でおその音を増幅させ、お腹を動かして鳴き声を演奏しているのです。

空洞な共鳴室に太陽光が透過するクロイワツクツク
腹部を複雑に動かしながら鳴くツクツクボウシ
腹部を持ち上げて大音量で鳴くエゾゼミ
腹部を膨らませて鳴くニイニイゼミ
クロイワツクツク、クマゼミ、ニイニイゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシのお腹の動きに注目

まとめ

・オスのセミは胸部と腹部の境目、腹弁の下に発音筋発音膜という発音器官を持つ
発音筋によって発音膜を動かすことで音が出る
・発音膜で出た音は共鳴室で増幅される
・セミは腹部を器用に動かして鳴き声を演奏する

セミの鳴く仕組みについて理解していただけたでしょうか?この記事を読んでみての感想や疑問点などは遠慮なくコメントにお書きください!
また、鳴き声に関すること以外の全体的なセミの体の構造については別の記事でまとめていますのでぜひご覧ください!

参考文献

・林正美 税所康正『日本産セミ科図鑑』誠文堂新光社 2011
・税所康正『セミハンドブック』文一総合出版 2019
・中尾舜一『セミの自然誌ー鳴き声に聞く種分化のドラマー』中公新書 1990

ミソミソ

セミ好き歴20年!
写真や映像を学び、セミの魅力を発信することを目標にしています。

ミソミソをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました